浮気で離婚する場合の財産分与|有責配偶者でも分与はある?
「夫(妻)が浮気した。離婚する場合、財産はどうなるのか」「浮気した側は財産分与を受け取れないのか」——浮気が発覚して離婚を検討する際、多くの方が抱く疑問です。
結論から言えば、浮気(不貞行為)をした有責配偶者でも、原則として財産分与は1/2の割合で認められます。「浮気したのだから財産はもらえない」は法律上の誤解です。
一方で、「財産分与と慰謝料は別の話」「隠し財産がある場合は調査が必要」「財産分与の時効は離婚から2年」など、知らないと損をするポイントが多くあります。本記事では浮気・不倫が絡む離婚での財産分与を、具体例・ケーススタディ・よくある質問を含めて解説します。
「財産分与と慰謝料の違いが分からなかった」:72%/「浮気した側は財産分与を受け取れないと思っていた」:58%/「財産分与の時効を知らなかった」:64%
財産分与とは何か|基本の定義と法的根拠
財産分与とは、婚姻中に夫婦が共同で築いた財産を、離婚時に分配することです(民法768条)。婚姻関係という共同生活の中で形成された財産を「清算」する手続きです。
財産分与の3つの性質
財産分与には、法律上3つの性質が認められています。
- 清算的財産分与:婚姻中に共同で築いた財産の清算(メインとなる性質)
- 扶養的財産分与:離婚後の生活が困窮する一方(主に専業主婦)への経済的援助
- 慰謝料的財産分与:離婚原因を作った側が、財産分与の形で慰謝料を支払う合意
実務上は①の「清算的財産分与」が中心です。「誰が離婚原因を作ったか」は、原則として財産分与の割合に影響しません。
財産分与の申請期限(時効)
財産分与の請求は、離婚成立から2年以内に行う必要があります(民法768条2項)。2年を過ぎると家庭裁判所への申立てができなくなります。「離婚した後でも請求できる」と思っている人は多いですが、時間的な制限があることを忘れないようにしてください。
浮気した側(有責配偶者)でも財産分与は受け取れる
財産分与は「婚姻中の財産形成への貢献度」に基づく清算です。「誰が浮気したか」ではなく「誰が財産を作ったか」が基準になります。
なぜ有責配偶者にも財産分与が認められるのか
浮気した配偶者への財産分与が認められる理由は、財産分与と慰謝料が全く別の概念だからです。
- 財産分与:婚姻中の財産形成への貢献の清算。浮気の有無は原則無関係
- 慰謝料:不貞行為による精神的苦痛への賠償。浮気した側が支払う
つまり「浮気した夫が家計に貢献していた場合、その貢献分は財産分与で受け取る権利がある。ただし、浮気による慰謝料は別途支払う義務がある」——これが法律上の整理です。
財産分与の割合が変わるケース
原則は1/2ですが、以下の場合は割合が変わることがあります。
| 状況 | 分与割合の変化 | 理由 |
|---|---|---|
| 専業主婦・専業主夫の場合 | 原則1/2(変わらない) | 家事・育児も財産形成への貢献と認められる |
| 一方の収入が圧倒的に多い場合 | 5:5〜6:4程度で変動 | 貢献度の差が認められる場合 |
| 婚姻前の財産が混入している場合 | 特有財産を差し引いて計算 | 婚姻前の財産は財産分与の対象外 |
| 慰謝料代わりに財産分与を多く渡す合意 | 双方の合意次第で変動 | 慰謝料的財産分与として認められる |
財産分与の対象となる財産・ならない財産
対象となる財産(共有財産)
婚姻中(入籍日〜離婚または別居日)に形成された財産が対象です。名義がどちらであっても、婚姻中に形成されたものは共有財産とみなされます。
- 預金・貯金:婚姻後に積み立てたもの(夫婦どちら名義でも)
- 不動産:婚姻後に購入したマイホーム・土地(ローン残高も考慮)
- 退職金:婚姻期間中に積み立てられた分(将来の退職金も対象になることがある)
- 年金(婚姻期間分):年金分割制度により、婚姻期間中の厚生年金記録を分割できる
- 株式・投資信託・FX口座:婚姻後に投資した分
- 自動車・家電製品・家財:婚姻後に購入したもの
- 生命保険の解約返戻金:婚姻中に積み立てたもの
対象にならない財産(特有財産)
- 婚姻前から持っていた貯金・財産
- 婚姻中に親から相続・贈与で受け取った財産
- 婚姻前から所有していた不動産
- 一方が個人的に受け取った損害賠償金・慰謝料
例えば「婚姻前の貯金100万円+婚姻後の積立200万円が同じ口座にある場合」、婚姻前分(100万円)は特有財産、婚姻後分(200万円)が共有財産となります。通帳の記録・入金履歴から分離することが必要です。
財産分与を有利に進めるための3つの戦略
戦略①:慰謝料と財産分与を一体で交渉する
財産分与と慰謝料は別の概念ですが、交渉の場では一体で扱うことができます。
例えば「財産分与500万円+慰謝料200万円」という構成を「財産分与300万円(慰謝料200万円分を財産分与として上乗せ)」と整理することで、支払いの構造をシンプルにする「慰謝料的財産分与」の合意が可能です。これにより離婚協議がまとまりやすくなることがあります。
戦略②:隠し財産を見逃さない
浮気した側が財産を隠しているケースは少なくありません。「以前より貯金が減っている」「収入の割に財産が少ない」という場合は、隠し財産の可能性があります。
隠し財産を調査する方法としては、弁護士による「弁護士照会」(金融機関に残高照会を依頼できる制度)があります。探偵事務所も財産調査に対応している場合があります。
戦略③:証拠を確保してから交渉に臨む
浮気の証拠がある場合、交渉の場での立場が大きく変わります。「証拠があるのだから慰謝料も払い、財産分与の条件も飲んでほしい」という交渉が可能になります。証拠がない状態で先に離婚を告げてしまうと、相手が強気に出やすくなります。
当メディアのアンケートでは、証拠を確保した上で交渉した人の平均慰謝料が148万円、証拠なしで交渉した人が42万円と、3倍以上の差がありました。
財産分与の具体的な計算例
実際にどのくらいの金額が財産分与の対象になるか、ケーススタディで確認します。
ケース①:共働き夫婦(婚姻10年)
| 財産の種類 | 金額 | 備考 |
|---|---|---|
| 夫名義の銀行預金 | 400万円 | 婚姻後の積立分 |
| 妻名義の銀行預金 | 200万円 | 婚姻後の積立分 |
| マイホーム(時価) | 3,000万円 | ローン残高1,800万円を控除 |
| マイホーム(ネット) | 1,200万円 | 時価-ローン残高 |
| 株式・投資信託 | 300万円 | 婚姻後に取得したもの |
| 共有財産合計 | 2,100万円 | |
| 財産分与(1/2) | 各1,050万円 | 浮気の有無に関係なく |
→ このケースで夫が浮気していた場合でも、夫は原則として1,050万円を受け取る権利がある(ただし慰謝料150〜200万円を妻に支払う義務も発生)。
ケース②:専業主婦(婚姻15年・夫が浮気)
専業主婦でも家事・育児による財産形成への貢献が認められるため、原則1/2の財産分与を受け取れます。婚姻15年の場合、夫の退職金(婚姻期間分)も対象になることが多く、財産分与の総額が大きくなりやすいです。
財産分与と慰謝料を同時請求する際の注意点
それぞれの時効が異なる
- 財産分与:離婚成立から2年以内に家庭裁判所へ申立て
- 慰謝料:浮気の事実を知った日から3年以内に請求(または浮気行為から20年)
離婚後に「やっぱり慰謝料を請求したい」と思った場合は慰謝料の時効内であれば可能ですが、財産分与の請求は離婚から2年を過ぎると家裁への申立てができません。財産分与は離婚直後に動くことが重要です。
ダブル不倫(双方が浮気)の場合
双方が浮気していた場合(いわゆるダブル不倫)でも、財産分与は原則1/2です。慰謝料については、双方の責任の程度によって相殺される可能性があります。弁護士への相談が特に重要なケースです。
よくある質問(Q&A)
Q1:離婚前の別居期間中の財産はどうなる?
A:別居開始後に形成された財産は、原則として財産分与の対象外となります(別居後の財産は個人の収入で形成したもの)。ただし別居中も婚姻関係は継続しており、解釈が複雑になるケースもあります。弁護士への相談が確実です。
Q2:相手が財産分与に応じない場合は?
A:協議で合意できない場合は家庭裁判所に財産分与調停を申立てます。調停でも解決しなければ審判(裁判官が決定)に移行します。
Q3:マイホームのローンが残っている場合はどうなる?
A:不動産の時価からローン残高を差し引いた「ネット価値」が財産分与の対象です。ローンが時価を上回る(オーバーローン)の場合、財産分与の対象にはなりません。
Q4:相手が財産を隠している疑いがある場合は?
A:弁護士に依頼すると「弁護士照会」により金融機関への残高照会が可能です。また離婚調停・訴訟に移行すると裁判所から「調査嘱託」を申立てることもできます。
Q5:財産分与の合意書はどう作ればよいか?
A:離婚協議書として作成し、公正証書化することを強く推奨します。公正証書にすることで、支払いが滞った場合に強制執行(差し押さえ)が可能になります。
まとめ
- 有責配偶者(浮気した側)でも原則1/2の財産分与を受け取れる——これは法律上の原則
- 財産分与と慰謝料は全く別の概念。同時請求が可能で、「慰謝料的財産分与」として一体交渉もできる
- 財産分与の対象:婚姻後に形成した預金・不動産・株式・退職金(婚姻期間分)・保険解約返戻金など
- 財産分与の時効は離婚から2年。慰謝料の時効は「知った日から3年」。時効が異なることに注意
- 隠し財産の疑いがある場合は弁護士照会・探偵調査を活用
- 証拠ありでの交渉は証拠なしの3倍以上の慰謝料獲得につながる(当メディア調査)
- 財産分与の合意は離婚協議書として作成し、公正証書化することが最善
